ヴェローナ到着翌日から早速学会が始まる。今回参加したのは ASELE というおそらくは世界最大規模のスペイン語教育学会。世界各国から実に 300 人以上のスペイン語教員が集まり、「ぼく・わたしの考えた最強の指導法、教材、教案、etc.」を披露しあうというイベントだ。こう書くとやや大袈裟な感じがするが、なんのかんの、狭い世界なので顔見知りも多く、同窓会的なテイストもある。特に今年は三年ぶりくらいの対面開催であるし。ちなみに、日本でスペイン語を教えている教員はネイティブも日本人も熱心な人がかなり多く、日本の教育機関所属の発表者はスペイン、開催国イタリアの代表団に次いで多かったように思われる。

ヴェローナ大学

大規模な学会なので、まあ、いろいろな考え方をする人がいるわけだが、「どうやったって外国語は難しいのでそこのところは認めた上でハードワークして行こうぜ」主義者が一定数おり、こういうスタンスは今後、クるだろうなと思った。今回は、この潮流について簡単に書いておく。

「どうやったって外国語は難しいのでそこのところは認めた上でハードワークして行こうぜ」主義

例えば最近、本屋さんなどで厳つめの英語教材が目立つとお思いの人も多いのではないだろうか。英語ネイティブが英語ネイティブ向けに書いた手加減一切なしの複雑な構造をした英文を恐ろしく細かく、一切の曖昧性を残さないように説明し倒した英文解体新書、みんな大好き速読英単語のエクストリーム版、速読速聴英単語 ADVANCED などなど。いずれも順調に重版を重ねたり、続刊がでたりと一定以上の指示を得ていることがわかる。本職も四苦八苦しながら愛読している。

こうした、ネオ詰め込み主義みたいな教材が歓迎されるのは、やはり、本職が高校生だった頃に全盛だった、

アクティブに心を開いてコミュニケーション!

みたいなふんわりした発想に基づく英語教育がロクな成果をもたらさなかった反動ではないかと思っている。

似たような発想に基づく言説に、

前置詞の使い方が複雑でわからない?「前置詞のコアイメージ」を捉えれば、あとはそこから派生して自然に使いこなせるようになるので暗記なんていらねンだわ。

みたいな暗記不要説もあり、それなりに幅をきかせていた気もするが、こちらも最近は下火になりつつあるような気がする。確かに、そういう面もあるにはあり、自分なりのストーリーを展開できれば前置詞みたいな用途のやたら多い語の習得もある程度は楽にできるとは本職も思う。が、やはりそれだけではどうしたって限界があり、そもそもある言語の母語話者は本人たちが思っている以上に「暗記」をしている(いちいち一つ一つの単語をくっつけて文を作るということをしていない)ということが最近の言語学の方の研究で明らかになっており、暗記の重要性が見直されつつあるように思われる。

こうした、結局、詰め込みが避けられないなら、詰め込む内容と詰め込ませ方を吟味するのが教員の役目であろう。という考え方が、本職のいう「どうやったって外国語は難しいのでそこのところは認めた上でハードワークして行こうぜ」主義である。最近公開した「最頻熟語リスト」もまさにこの発想で作ったものであり、今回のプレゼンのメイントピックであった。

Intro と ducción の間の謎のスペースはなんなのか

同様の思想の先生方からのウケは上々で、発表の間のカフェタイムでは機嫌よく本場のカフェラテを飲んだりしていたのだが、その際、発表を聞きに来てくれたスペイン人の先生からお声がけをいただいた。発表後に質疑応答のおかわりをいただけることほど嬉しいことはなく、ウキウキで応答したところ、

「外国語の意味を自分のところの母語で覚えるのはナンセンスではないか。我々は言葉の意味はイラストで覚えさせている」

といきなり切り込まれた。我々詰め込み派の対極にいる、「言葉なんて簡単で楽しいものだよ派」のこちらの先生は、流れるような動作で「これを見ろ、これはなんだ?」とタブレットを本職に手渡した。そのタブレットには、一枚の↓のようなイラストが映し出されていた。

あまりにもアツい眼差しで問われたので、気づけば本職も「ま、manzana です。。。」と答えていた。するとそのイラスト先生はさらに気を良くして、「そうだ。できるじゃないか。じゃあ次行くぞ」と、オレンジのイラストを差し出してくるのであった。結局、十問くらい、ご出題いただいただろうか。最終的には、「これが、心で言葉を覚えるってことだから」みたいなことをおっしゃり、満足気に立ち去っていかれた。

いろんな人がいろんな事を考えているんだなあ

本職の心の中のみつをがそうつぶやいたという。

By qsupe

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