個人的に大事にしている経験則の中に、

  1. 大きな町から路線バスに乗って少し移動すると素敵な小さな町、村に行ける。そうした小さな自治体の満足度はたいてい高くなる
  2. バルもいいが、本当に美味しいものを食べたいならレストランに突っ込むべし

というものがある。この二点を合わせ、路線バスに乗って小さな村のレストランに行くこととした。バル巡りが最高に楽しい街ではあるが、どこかでレストランに行きたいなとは思っていた。

サンセバスティアン二日目、簡単な朝食をバルでとり、サンセバスティアンから30分ちょいの Tolosa という村に向かった。オリア川という川沿いの可愛らしい村である。バスに乗っている間に wikipedia で知ったのだが、かの闘将、シャビアロンソの地元でもあるそうな。

村の中心には今の日本ではなかなかお目にかかれないような危険遊具が複数設置された公園があり、息子の心をわしづかみにした。日本同様、人口減に喘ぐスペインであるが、こんな大きな公園があるあたり、トロサはファミリー層がたくさん住んでたりするのであろうか。

この村にある Asador Nicolás がお目当てのレストランである。Asar は「焼く」、-dor は「~する人」という意味の他に「~する場所」という意味になることがごくまれにあり、これもそのケースである。つまり、「ニコラスの肉焼き処」みたいな店名である。

美味い物、名物だらけのバスクであるが、諸々調べるに、Txuleta という骨付きステーキはどうも別格のようである。本邦における寿司の枠というか。ならば、そしてここ Tolosa は Txuleta の名店がいくつもあるということらしく、ぜひ行かねば、となったわけである。

お目当てのレストランは件のオリア川のほとりにあり、いかつめの外観。少々ビビる。

店内も店内でやはりシックなのであり、背筋が伸びる。

さて、注文。ステーキを頼む場合、お店の人に肉の重さを指定するというシステムなのは予習して知っており、本職 300g 配偶者 200g 子 100g 、悔いを残さないためのおまけの 100g 、合計 700 グラムで勝負するということも決めていた。そんなわけで、700 くださいと言ったところ、「今日はミニマムで 1 キロちょいだ。どうする」と熟成牛様が運ばれてくる。肉食民族の実力を感じることとなったが、こちらとて不退転の覚悟できているのでお願いする。

それぞれの民族にそれぞれのステーキ作法があるのだろうが、バスク地方は基本的に岩塩だけかけて炭火で焼くだけというストロングスタイルの模様。ガラス張りの焼き場がクール。

如何せん巨大なお肉様なので、焼き上がりには時間がかかる。そんなわけで、前菜系もいくつか頼んだがすべてうまかった。

頼まなくても出てくるサービスのコロッケ。これから肉をドカ食いしようというのにコロッケが出てくるというのも日本人からするとショッキングであるが、肉系のレストランでは定番だったりする。

こちらもステーキを頼んだ客にサービスで出される牛出汁のブイヨン。出汁がこれだけ旨いのであれば、お肉様の方はどうなってしまうのか……と客に思わせる演出が憎い。

アーティチョークのグリルにアーモンドと豚バラのソースをかけたもの。この少量でグラスワインが空になる。

そして、この店を訪れた人たちが口を揃えて下手したらステーキよりうまいのではないかと言われている赤ピーマンのオーブン焼き。えらいお肉様から削り取った牛脂なども使って焼き上げるらしく、悶絶物の美味さであった。スペインのピーマン、ピーマン料理は恐ろしく打率が高い。

前菜とおまけだけでもう大満足なのでは?となったところで満を持してお肉様が運ばれてきて、お店の人がうやうやしく切り分けてくれる。

赤身のところ、ロースっぽいところと二種類に分けて切り分けてくれたが、もう、これは、言葉を失うレベルで美味しかった。極上の一言である。本職、美味しいものをいただいているときに発想のスケールが極端に大きくなるのだが、この時も、「俺は……生きているうちにあとどれだけこのレベルの極上の味に出会えるだろうか……」と半べそかきながら考えていたという。

By qsupe

One thought on “Tolosa という村 ステーキ 公園”

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