バイヨンヌ滞在三日目の朝、ふと、ちょっと近場の街に日帰りで遊びに行きたいなという気分になる。インターネッツで調べてみると、ローカル電車で 30 分ほどでサン・ジャン・ド・リュズという素敵な村があるということだったので、ふらりと行くことにした。
大体二時間もあれば、一通り見て回れる規模の可愛らしい海辺の村であった。



また、この村はスペインまで 15 km 程度(本職の拙宅から本学まで距離に等しい)のところにあり、スペイン料理店があちこちにあったり、スペイン人観光客がたくさんいたりでスペインの B 面を見ているような感じがあった。地理・文化的にそういう村なのでスペイン語もかなり通じたりする。

連日の暴飲暴食で少々胃と肝臓が疲れており、フランス名物ガレットで軽めのランチをとる。

食後のコーヒーをいただいたのち、我々はベレー帽屋さんを探すべく、再び歩き始めた。
何故、ベレー帽屋を探すかというと、バスク地方のシンボルだからである。これを六歳の息子にかぶせたら大層可愛かろうな、と。
小さな村だけあり、ベレー帽を商う店はすぐに見つかり、思いのほか良心的な値段に胸をなでおろす。色は宗教上の理由で赤とした。

さて、この後の旅程において息子はどこへ行くにもベレー帽をかぶるようになったわけだが、それにより旅自体が激変したのが印象的だ。
まあ、バスクの人々が、会う人会う人、どえらく親切になったのであった。
そもそもこの村に至るまでも、フランス人たちえらい気さくで親切だなと思っていたのであるが、ベレー帽をかぶった幼児を連れていると、輪をかけて皆さん優しくなるし、いろいろな人からお声がけをいただくようになったのである。「芦田愛菜ちゃんとか鈴木福君の親御さんもこんな感じだったのかな……」なんて思ったレベル。
息子が妙にベレー帽をかぶりこなしていると、普段はいかないギャラリー的なところにも足を運ぶのだから現金なものである。

ここまで現地の人とのコミュニケーションが発生する旅はこれまでになく、なかなか楽しい経験であった。
この度に出る前、同僚の一人が「子連れで旅すると見える世界が全然変わる」とおっしゃっていたが、全くその通りだと思う。