バスク料理をごちそうになった日はスペイン最終日で、
宿に帰って翌日のイタリアへの移動のための準備を開始する。
洗濯のため、コインランドリーに行ったりもしたのでそれなりに遅い時間になってしまった。
それでも、昼がご馳走だったので、小腹が空いている程度という塩梅。
いい感じのバルでビール飲んでなんかタパスつまんで寝るか、というテンションで街に出た。
日本では秋が中止になっていたので、
一張羅を除いては半そで短パンしか持ってきていなかったのだが、
マドリードはしっかり秋で少々寒かった。
ぼんやり歩いていると、脳裏に浮かぶのはこちらの大学でお世話になった
同い年の姉弟子のことである。
言語処理とペルシア語という異色の二刀流で、ものすごい速さで博論を書き上げ、
今はドイツの大学で研究者をしている才媛である。
ここ数年没交渉になっていたのだが、弟弟子によると近々結婚するとのこと。
めでたいのう、などとぼんやり考えていた時にひらめいた。
そうだ、アネキに連れて行ってもらったケバブ屋に行こう
姉弟子も姉弟子で食べることに真面目で、かつ中東、アフリカ愛に溢れる人なので、
マドリードにいる頃には当該地域の料理を出す飲食店によくつれていってもらっていた。
セネガルとかエチオピアの食堂、レストラン。
その中でも本職が特に好きだったのが Kebab house というスタンドであった。
Kebab house
ご存知の通り、今のヨーロッパ諸国には中東からたくさん人が来ており、
彼らのソウルフードであるケバブを出すスタンド、食堂もそこら中にある。
ハズレの少ない食べ物で、どこで食べても美味しいのだが、たまにえらくレベルの高いところがある。
Kebab house はまさにそんな珠玉の名店である。

1978 年開店ということで、ひょっとすると元祖的な存在かもしれない。
5畳くらいの狭い店で、持ち帰るか店先に並べたテーブルで食べるかというローカル感、
ケバブは牛肉のシャワルマ(薄い皮で巻くやつ)のみというストロングスタイルがたまらない。
もっとも、注文・会計が電子パネルになっていたのにはたまげたが。

お店の皆さんが敬虔な信者であるためか、酒はない。
その代わりにアイランという塩味のヨーグルトドリンクがあり、ガチ感を演出している。
最後にこの店に来たのも 10 年くらい前だが、相変わらずの極上っぷりでうれしかった。
サンキュー姉弟子、フォーエバー姉弟子、コングラチュレーションズ姉弟子。

さて、急に話が飛び、3日後の夜。この出張のラストナイト。
夏休み中の最大のストレス事項、学会でのプレゼンを終えた本職はローマ郊外をさまよっていた。
学会あるあるだが、特に自分の発表の後はなんというか放心状態となる。
よって、この時のテンションは、「豪遊すんぞ!」ではなく
「いい感じのバルでビール飲んでなんか切り売りのピッツァでもサクッと食べて寝よ」というものであった。
首尾よくいい感じのクラフトビールバーでビールを飲み

さ、ピッツァ行くかと再び歩き出して数分後、異様にオーラの出ているケバブ屋を見つけてしまった。

「7泊の出張で、ケバブ二回食べるのか……」と思う間もなく、ケバブ屋の重力に引っ張られた。

中東系の人々、現地イタリア人半々の列に並ぶ。ここは口頭で注文するシステムらしく、
先頭の客は「トマト、レタス、ピクルス、ソースは辛いのとヨーグルト半々」
みたいな好みの指定を大声でする。
野菜マシマシニンチョモアブラカラメみたいなノリか。

まあもう、食べる前からわかっていたが、こちらも極上であり、大いに気に入った。
なんなら 24時間営業なので、翌日の朝食もここのケバブにしたという。
流石にケバブ食べ過ぎだと思うが、これはこれで日本でなかなか食べづらいジャンルの食べ物なので、
ヨーロッパであえてケバブに突っ込むのはアリだと思う次第。
財布にも優しいしね。