70代半ばの本職の父親は、二十歳の頃、生まれて初めて食べたピザがどれだけ衝撃的だったかを未だに熱く語っている。
本職も本職で、大学三年の時に初めてメキシコ式のタコスを食べた時の感動を、ことあるごとに息子に説明している。
千切りキャベツが入った沖縄式でもなく、小麦の皮のアメリカ式でもない、ガチメキシコ式のものだ。
人間、20 前後の頃に自力で発見した食べ物への愛は死ぬまで尽きないのかもしれない。
そんなわけで、本職はそれ以来、メキシコ料理ファンも兼任している。
それなりに真面目にやっているので、ネトフリで見られる「タコスのすべて」というドキュメンタリーは二回見た。
なんとなく察しがつくであろう通り、タコスというのも地域差の多い料理であり、
このドキュメンタリーではメキシコと周辺諸国各地の名店にそこの得意タコスの調理法や背景、果ては店の人たちの人生模様などが美しく、迫力のある映像とともに語られている。
毎回激しく美味しそうなタコスが出てくるため、メキシコも一周せねばならぬな、という気分になること請け合いである。
そんな「タコスのすべて」であるが、特に本職の心を鷲掴みにしたのがカルニタス (carnitas) というものだ。
これは、豚のほぼすべての部位をラードで低温調理し(コンフィ)、細かく刻んで薬味やらサルサソースやらと、ライムをたっぷり絞って食べるというものである。
カルニタスの「絶対に美味しいのはわかるんだが、どういう味なのかまるで予想できない」
という感じが非常に強く本職の興味をひき、気が付くと、「福岡でカルニタス食べられればなあ(接続法過去)」と独り言ちているのであった。
そして最近、ひょんなことから、あろうことか本職の住む西新エリアに本格タコスとクラフトビールの店があり、そこではカルニタスもやっている、という情報をキャッチし走って行ってきた。
このお店こそが表題の、BITTER Tacos & Beer である。かのラーメンの名店、なりたけの隣にあり、
店内には「開店一周年記念」という旨のポスターが貼られていた。
なりたけには月一で行っているのに、Bitter ができたことには一年も気づけなかった本職の認知能力はさておく。

店に入るとまず、カウンター奥のおびただしい数のビールのタップに目を奪われる。
アサヒや麒麟といった大手のビールは一切なく、全てクラフトビールのものだ。
この規模のお店で、常時、10種類前後のクラフトビールを生で出す。
タコスがなくとも、ビアバーとしてでも天下獲れそう、と思う。

で、タコスであるが、やはりメニューにはしっかりカルニタスが載っていた。
他にも、チキン、エビ等など在り、妻子も一緒だったので一通りお願いした。
うまいビールを飲みながら待つこと数分、運ばれてきたのがこちらである。

雑に写真を撮り、すぐにかぶりつく。トウモロコシの皮(トルティジャという)の香ばしさ、パクチーや玉ねぎのパンチ、などなど、強めの味の要素が大変多いのであるが、それでも主役の豚肉の存在感が圧倒的であった。どうも普通の肉の部分以外にも、おそらくは皮や豚足も入っているようで、食感も楽しい。
多分、ものすごく手間がかかっているのだろうが、それだけに味は無類である。
一度はこのカルニタスだけで満腹まで行きたいと考えているレベル。
食べ物はガチだし、ビールはクラフトビールのみなのだが、
好きなタコス 2P とビールで 1500 円ぽっきりというお得なセットがあるのもうれしい。
シメに隣のなりたけでラーメン食べても 2400 円である。