サンセバスティアン。ビスカヤ湾の真珠と言われる美しい街であり、映画祭などの世界的イベントが開かれる文化都市でもあるが、それでもやはり、この街の一番の修飾語は「美食の」であろう。特にスペインファンだったり、スペイン語学習歴がない人であってもサンセバスティアンの飯が美味い、くらいのことは何度か聞いたことあるのではなかろうか。実際に我々も、この街で暴飲暴食をするためにやってきたのである。
10万人あたりのミシュランの星の数という謎指標においてサンセバスティアンは世界一であり、当然ながらこの街にはハイレベルのレストランが犇めいているが、それでもこの街を訪れる人々のお目当てはバル巡りであろう。三泊四日の滞在中、我々も基本的にレストランではなくバルで食事をとった。
もうすっかり日本にも根付いた感じもあるが、バルとは典型的には↓のようなカウンターで小皿料理(タパス)をあれこれ食べるというタイプの飲食店である。立ち飲みとなることも多い。バル激戦区みたいな街では複数軒ハシゴするのもよくあることだ。

さらに、スペイン側のバスク地方ではバルの食べ物をタパスではなくピンチョスと呼ぶ。基本的にタパスは手軽な家庭料理という感じの食べ物だが、ピンチョスはレストランのメインディッシュを小皿で出す、という趣の食べ物である。ハイグレードなタパスがピンチョス、という理解でまあいいと思う。円安ユーロ高であっても、日本の普通の居酒屋と同程度かちょっと安いくらいの値段設定なのも大変うれしい(フランスは高かった……)。
以下、サンセバスティアンで食べた珠玉のピンチョス達。店から店へ、自分好みの味を求めて歩いたり、鮮やかなアイディアに感動したり、普段の料理に何か活かせるものはないかと目を光らせるのが大変楽しいのである。
Gilda
オリーブの漬物、青唐辛子の酢漬け、アンチョビを串に刺したクラシックピンチョス。ジモッティー達のバル巡りの初手はほぼこれ。地味だと思うなかれ。この三種、旨味の相乗効果が半端なく、見た目以上の幸福感をくれる。酸っぱさと辛さのおかげで飲食欲に火がつくのもよい。

Tortilla de patatas
定番中の定番、ジャガイモの入ったスパニッシュオムレツ。本職、根がマニュアル人間にできているので、高い頻度でこちらを頼む。マドリードなどではジャガイモ主体のみしっとした食べ物だが、バスクではどこ行ってもフワトロな仕上がりであった。

タコ
スペインで食べるタコを焼いたものに外れはないと思っているが、やはり美味しかった。マッシュポテトとよく合う。

白アスパラ
なかなか日本ではお目にかかれないサイズの白アスパラをグリルで。自家製のマヨネーズも酸味のあるソースもベストマッチ。

Chistorra
スペインにおける焼きソーセージというジャンルの圧倒的な王様。スペイン全土でお目にかかるのだが、どうもバスクとその近隣自治州が本場らしく注文してみたらやっぱり美味しかった。圧倒的肉汁、塩分、そしてニンニク。ここまでビールの進む食べ物というのも珍しい。

フォアグラのリゾット
新市街にある超有名店、Bergara の看板メニュー。お茶碗軽めに一杯程度のリゾットにソテーにしたフォアグラが乗る。そして多分千円しないという価格設定。ごったましか……

最後に個人的ナンバーワン、Canutillo de atún y arroz
タコスの皮のようなものを揚げたものをアイスクリームのコーンにみたて、そこにアボカドペースト、マグロ、そして日本米を詰め、仕上げになんとふりかけをかけるという、シェフの和食愛がほとばしる一品。以前にも書いたが、スペインのマグロ料理は大当たり率高い。せっかくなので、どういうものなのか、公式インスタの動画でどうぞ。https://www.instagram.com/p/C2ZhpygNleK/?hl=ja
ちなみに、最近は西ヨーロッパではじわじわふりかけがブームになっているらしい。サン・ジャン・ド・リュズのハイセンスな食品店でもふりかけを見かけた。