いよいよ発表されました、スペイン版流行語大賞 Palabra del año 2023。
本格的なコロナ後の最初の一年、どんな言葉が大賞を獲るのだろうと思っておりましたが判明しました。
Polarización
であります。
Polarización、並びにその派生元である動詞 polarizar(se) はとりたてて新しい言葉ではありません。
物理学における「分極、偏光」あるいは「注意や関心の集中(西和中)」という意味で使われていました。
そしてこの動詞は後に、こうした意味から転じて、「二つの方向に位置付ける(Orientar en dos direcciones contrapuestas: DLE)」という意味で用いられるようになりました。つまり、「二極化させる/二極化」ということです。
La guerra polarizó la sociedad. ‘戦争は社会を二極化させた’
という風に使うわけです。本来の「集中させる」という意味とは違うのがおわかりいただけるでしょう。
で、この企画の主催者である Fundéu によると、この新しい意味での polarización は 2023 年を通してメディアなどで頻繁に用いられていたため、今年を象徴する単語とした、とのことです。
政治、思想、社会、スポーツ等々、いかなる領域においても Polarización が見受けられたとのこと。
アジアの離島みたいな本邦とヨーロッパの辺境のようなスペイン、どこにいっても人間や社会の在り方は変わらんものだなと改めて思った次第。
Polarización のほかに以下の 11 の語が大賞候補となっておりました。
Amnistía
「恩赦」のこと。今年、スペインの首相が信任投票での得票を確保するために、逮捕されていた選挙法違反のカタルーニャ独立派の活動家らに「恩赦」を出したことによると思われる。
これには右派だけでなく多くの左派も反発し、各地で大規模デモが繰り返された。これもまた polarización か。
Ecosilencio
「エコ沈黙」ということになりますが、これは企業などが環境配慮に関する情報を隠蔽することを指します。街路樹に除草剤を撒く行為とは似て非なるものです。
Euríbor
ユーリボー、つまり欧州銀行間取引金利のこと。欧州でも利上げするか否かの議論が活発に交わされたとのことで、その流れで候補入り。スペイン語ファン的には i にアクセント記号を置くことに気をつけたい。
FANI
未確認異常現象、fenómeno anómalo no identificado の略語。何故これがランクインしたのかよくわからないが、世界中のどこでも、呑気に UFO やらネッシーの話で盛り上がれる状態になることを切に望む。
Fediverso
Fediverse のこと。情報工学用語の模様。質の悪いインターネット上の喧嘩鑑賞が専門の本職にはよくわからない。
Fentanillo
フェンタニル、英語では fentanilo のこと。強力な鎮痛剤だそうですが、アメリカでは合法ドラッグとして良くない使われ方をしており社会問題になっているとのこと。これがスペインの流行語大賞に入ってくるあたり、欧州でも社会問題になっていくものと思われる。
Guerra
言うまでもなく戦争のこと。
Humanitario
「人道的」ということ。従来、この言葉は戦争とか争いという言葉の対義語であったわけですが、現在では自然災害などに際しての援助などにも使われるようになった、要はここ数年で意味が広くなった形容詞です。そして、スペインでも自然災害や移民問題など、より広い意味での人道的な対応を迫られる出来事が多々あったため、候補入りしたと思われます。
Macroincendio
incendio は「火事」のことなので、大規模火災のこと。ハワイやカナダと併せ、スペイン・カナリア諸島での大規模火災も日本で大きく報じられました。
Seísmo
「地震」のこと。中東での大きな地震があり、特にモロッコとの関係の深いスペインではこの言葉が強く意識されたのだと思われます。教科書などでは terremoto という単語が出てきますが、こちらはやや硬め、専門用語的な語です。中南米では sismo という語が好まれるそうです。また、この語派生の言葉は非常に多いので、「ses-, sis- は地震に関連がある」ということを覚えておくとスペイン語的にも英語的にも便利です。antisísmico, anti-seismic = 「耐震」など。
Ultrafalso
ディープフェイクのこと。23 年時点で騙される気しかしないわけですが、今後数年でどうなってしまうのだろう。