Cádizで宿泊したパラドールの部屋に感動した後、スーパーで食料を買い込み、夜な夜な研究発表の練習をした弊職です。
授業では散々「直前に詰め込んでも無理だからな!普段からしっかり復習しろよ!」とか言ってるくせに。

↑プロテインヨーグルト、オイコス スペインバージョン
今回の旅の目的は、カディス大学で開催される「スペイン語・ポルトガル語圏の待遇表現に関する国際学会」での研究発表です。

待遇表現とは、上下や親疎の人間関係を言語化するもの。
日本語の代表格は敬語。
スペイン語では、聞き手に対してtú(親称)とusted(敬称)の使い分けや、Me gustaría…, quería…などの婉曲表現も含まれます。
スペイン語圏・ポルトガル語圏だけでなく、ドイツやオーストリア、アメリカからの参加者もいて、様々な言語が飛び交っていました。
ルーマニア語(アメリカからの参加者)とスペイン語(弊職)でもなんとか会話が成立、ロマンス諸語バンザイ。
アジア人は弊職のみ、受付で顔を見ただけで名札を渡されました。そりゃわかるよね。

学会のロゴが入ったファイルやエコバッグ(透けるほど薄い)が配布されました。いい記念。あの日以来使ってないけど。
研究発表の前に、vosに関する講演会が開催されました。
Vosというのは、現在は中南米の一部の地域でのみ使用されている主格人称代名詞。
主格人称代名詞は早い段階で習う文法事項ですが、「中南米ではvosotrosは使用しない」という説明があったと思います。
アルゼンチンなど一部の地域ではさらにtúを使用せず、vosを使用します。
紙幅の都合上、詳細は山下(1985)を一読されたい。
http://sjsrom.ec-net.jp/studrom/018/studrom_018_009.pdf
ざっくり説明すると、古い敬称であるvosが新しい敬称vuestra merced(のちのusted)の登場によって敬称としての価値を失い、そのうちにtúとvosが区別なく使用されるようになりました。
その後vosはスペインではすっかり使われなくなるのですが、その変遷期にスペインが植民地を拡大したことによって、一部の地域にvosを使用するスペイン語が移入され、今なおその使用が残っている地域があります。
講演会はアジアで見られるvosに関するもので、かつてスペインの植民地だったフィリピンやインドネシアの一部の地域での調査報告も兼ねていました。
非常に興味深く聞いていると、スライドにvosの使用が残っている地域を示す地図が表示され、よく見みると…
なんと!地図の日本の位置に印が!!!
え、北日本でvos使ってたっけ?何かの聞き間違え??などと混乱していると、日本については何も触れずに講演会終了。
あれは一体なんだったのか、という疑問を抱えたまま、初めての国際学会での発表を迎える弊職、しかもトップバッター。
緊張で落ち着かずソワソワしていると、メキシコ人の先生(初対面)が「大丈夫、僕たちはファミリーじゃないか!」と声をかけてくれました。
めっちゃフレンドリーやーん。
一気に緊張が和らぎ、アットホームな雰囲気の中無事発表終了。
そして昼食の時間、思いきって講演者に日本についていた印が何だったのかを尋ねてみることに。
すると
「日本?日本…あーはいはい、直前にスライドの地図の大きさ変更したからさぁ。フィリピンの印が日本のとこいっちゃったんだね、ごめんね!」とのこと。
「おい、ここは国際学会やぞ。フィリピンの印が日本にくるほどサイズ変えといて確認せんかったんかい。」
とは流石に言わないでおきました。
驚いたのは、学会の昼食にビールやワインが出てきたこと。
割とよくあるようですが、アルコールが飲めない弊職からすると、「これから発表する人もいるのに酒飲むんかい!!」でした。
「ビールくらいならね。リラックスするのにちょうどいいよ」だそうです。そうなんだぁ。
この昼食で仲良くなったオーストリア人、スペイン人と弊職の3人で学会後、一緒に観光することに。
民俗博物館へ行ったり、夜のカディスをぶらつき、夕食も一緒に食べました。
それまでずっと夜は一人ホテルに缶詰で発表練習をしていたので(真面目)、久々に人と食べる夕食は染みたなぁ…。
「何歳?」「いくつに見える?」「その質問嫌いやわぁ」などと盛り上がり、楽しい夜を過ごしました。
つづく
参考文献
山下好孝(1985)「中南米スペイン語に於ける2人称代名詞について」, 『ロマンス語研究』18, p.149-158.