好きな英語の動詞を一つ挙げてください。

そういわれたなら、迷うことなく By all means, “to cherish”. と答えるであろう。

この動詞を初めて耳にしたのは、名画、『ローマの休日』を鑑賞していた時の事であった。

過酷なヨーロッパでの表敬訪問周りの旅に嫌気がさしたアン王女が、ローマで脱走。シブい新聞記者とジェラートを食べたりする、あのローマの休日である。

問題のシーンはラスト、なんのかんので公務に戻ったアン王女が「今回の旅で一番気に入った街は?」と訊かれ、

“By all means, Rome. I will cherish my visit here in memory, as long as I live.”

と答えるあのシーン。「それはもう、ローマです。生きている限り、私はこの街での滞在を思い出しては懐かしむでしょう……」と。

ただ、この cherish という動詞、「懐かしむ」では訳しきれていない感がある。日本語にもスペイン語にも似た動詞が存在しないのではないかという気さえする。というか、当の英語ネイティブでも多分、うまく言語化できてないのではないだろうか。Cambridge Dictionary には、

to keep hopes, memories, or ideas in your mind because they are important to you and bring you pleasure

とあるが、これでも三分の一も伝わらない気がする。それぐらい、言語化しにくい微妙な心情を表した動詞だと思う。そんなわけで本職は独自にこの動詞を

心の中の思い出宝箱を開いては温かな気分にひたろうとする行為

と規定している。まあ、cherish は cherish。 Cherish ん意味聞くような者は cherish 出来ん。といわれれば、その通りだと思う。

衛府の七人 (4) p.185

Salamanca へ

マドリードでのあわただしい滞在を終え、いよいよ、学会開催の地、Salamanca へ。この日の午前中に、なにやら変電所で火災があったらしく、北スペイン一帯で大規模な電車の遅延が起きるなど、げんなりさせられたが、無事に到着する。

狭い街のように見えるが、意外と広いのでタクシーに乗りホテルへ向かう。途中目に入るなんてことない 風景の時点でもちょっと危なかったが、旧市街と新市街を隔てるトルメス川とそこにかかるローマ橋を見て、本職の心の中の思い出宝箱のカギがバカになったのを感じた。

若い頃というのは、大抵、ロマンチックエンジンが常時全開になっているものだが、そんな時にこういう美しい街に滞在するとえらいことになる。見るもの聞くものは全て新鮮で、スペインをはじめとした世界各国の新キャラに囲まれていたあの頃の思い出はちょっと別格である。特に、このローマ橋の辺りは景色もいいし、風がいい具合にふくため、しょっちゅう散歩に来ており、いろいろ思い出した結果、常時 cherish 状態の涙目おじさんに堕したのであった。「明日、発表なんだけど……」という理性の声はもはや聞こえず、当時よく聞いていた曲を片っ端から再生しながら思い出巡りの散歩に出るのであった。

スペインで最も美しい広場と言われることもある Plaza Mayor。お祭り前なので、謎ステージが組まれているのはご愛敬
授業は大抵この建物だったなぁ……
大聖堂。信者でもないのに、中でよく休憩させてもらったなぁ……
よく行っていたバー。コロナ禍をよく生き延びてくれた……

By qsupe

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