さて、本職の愛しいサラマンカであるが、一般的に、この街は学生の街として知られる。
サラマンカ大学はスペイン最古の大学で、ボローニャ大学やオックスフォード、ケンブリッジと同時期に開かれたという(¡1218 年!)。そんなわけで、スペインの学術の中心地のひとつと言ってよく、様々な分野の様々な学会が年がら年中開催されている。
話はそれるが、大学都市としての圧倒的な年季と、「サラマンカで話されているスペイン語は最も美しいスペイン語」的な根拠不明の風説を背景に、街全体でスペイン語教育産業を盛り立てており、スペイン語の語学留学のメッカ的存在でもある。サラマンカ大学はもちろん、公・私立の語学学校みたいなのが大量にあり、長期から一週間単位の留学もこの街なら可能。物価も安いし、治安もいいので、スペインになにかしらの形で留学したいならサラマンカは候補に入れておいてよいと思う。

学会発表
今回、本職が参加してきたのは Conference: Verbs of thought and speech: pragmaticalization paths across languages という学会である。その名の通り、「『思う』系と『話す』系の動詞・世界の言語における語用論化への道筋」という恐ろしく範囲の狭いイベントである。
要は、ほぼすべての人間言語において、『思う』系の動詞と『話す』系の動詞は、話し手が伝えたいことを円滑に伝えるための、ある種の定型表現の一部を構成する。例えば、英語の generally speaking や I wonder if, you know? 日本語の「そう言えば」、スペイン語の mejor dicho なんかが該当する。
なぜ、どのようにして、言う・思う系の動詞にそういう機能が生じるのか?という問いを様々な言語の研究者が個別に掘り下げていき、その成果を持ち寄り、見比べてみれば、人間言語の変化とか、このタイプの動詞の本質の片鱗が見えてくるのではないか……そんな期待から開催された学会である。全体的に、ハードルが高そうに思われたので、本学の同僚の N 先生に共著者となっていただき、私の不慣れな部分を中心に大量のアドバイスを頂戴した上で臨んだ。
そんなマニアックなテーマで人が集まるのか?とご心配の向きもあろうが、これがまあ、盛り上がった。発表だけでも 33 件。扱われた言語もロマンス語諸語を中心に、ラテン語や古代ギリシャ語、ヘブライ語、スラブ系言語と、北半球全域から研究者が集まってきた感があった。まあ、それだけ言語学的にアツいテーマであるということなのだろう。テーマが狭すぎるがゆえに、やり取りが全体的に濃密で、ものすごく勉強になりつつ、また、励まされた気分になった。ああ、世界には同じようなことを考えている同志みたいな人たちが結構いるものだな、と。八時半開始の学会ディナーが 12 時過ぎまで続いたりと、まあ、盛り上がりました。
というわけで、満足度が高い学会参加となったが、これに加え、サラマンカ大学開催だとやっぱり燃える。その意味でもとてもよかった。言語学だと、中世バリバリの会場で発表やらせてもらえるのである。外観がこんなで、

中はこんな感じで裁判所風。

イタリアに引き続き七回四失点みたいな発表となったが、それでもやはり思い出の街で凱旋登板というのはグッとくるものがある。プロ野球選手が凱旋登板にやたらこだわるのもよくわかるな。
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