さらにスペイン語をがんばりたい人向けの投稿シリーズ第二弾。表題の通り、内容の充実した文法書を持とう、というものです。

本学の一年生向けスペイン語科目は文法の全容を大まかに理解することを目的としています。教科書もそういう目的で書かれているので、中級以上、生きたスペイン語を相手にしようと思うと、それだけではちと心もとないです。今後、みなさんはやろうと思えばスペイン語を使っていろいろできるわけですが、そんな時に役に立つ、しっかりした文法書を数冊紹介します。

スペイン語文法ハンドブック

上田博人先生の御著作。構成の妙や例文の多さ(さらに和訳までついている)、網羅性。お勧めしたいポイントだらけの本書ですが、白眉はやはり、一貫して文法事項を原理的に解説していくというスタイルでしょう。例えば、ir の直説法現在形は voy, vas, va とまったく不規則な活用をします。初めて ir がでてきたとき、なんでそうなるんだろう?と思った人も多いのではないでしょうか。この本にはそういう点がきちんと解説されています。やはりこういう原理的な説明があると、着実に理解が深まっていいと思うのですよね。

実は著者の上田先生は以前、本職の母校でも授業をされていて、ラッキーなことに本職も学部どころか修士課程でもご指導いただきました。忘れられないのはある日の授業内の発表。

「バーっとデータベースから集めたデータをガーっと統計ソフトでカイ二乗検定したらこんな結果になりました!」

みたいな雑というかほとんど反知性主義みたいな発表をしました。そんな私に上田先生は、「カイ二乗検定ってどういうことかわかっていますか?」とお尋ね。本職、「いえ、全部統計ソフトがやってくれました!」と即答。そんな私に先生はやんわりと一言。

「分析にブラックボックスがあってはいけませんよ」

研究だけでなく、教育、果ては私生活にすら通じる金言でした。

特にややこしい文法事項を扱っているときなどは、「まあ、そういうもんだからそういうもんとしてじゃーんと覚えといて」といいたくなるのがダメな語学の教員の性ですが、このスペイン語文法ハンドブックにはそういう不誠実さは一切ありません。一生手元に置いておきたい一冊と言えましょう。

詳説スペイン語文法

福嶌 教隆先生、 フアン・ロメロ・ディアス先生の御著書。スペイン語文法ハンドブックは初級~上級までというかんじですが、こちらは中上級者向けという感じでしょうか。やはり、「ここまで説明してくださるのか」と言いたくなることの多い名著です。索引がとても使いやすいので、辞書的な使い方をするのにも最適です。ネイティブがネイティブ向けに書いたものを読むときとか、何かスペイン語で書く時に重宝するでしょう。また、ここに書かれていることをきちんと理解し尽くせたら DELE の C レベルの文法問題ともいい勝負ができるでしょう。

また、こちらの本は語法、要はよく使う語のいろいろな使い方の解説に結構なページ数を割いているのも特徴的です。本職は語法は文法と同じくらい大事、と思っているのでこの構成にはとてもグッときました。

また、著者の福嶌先生も大変な人格者で、学会などでお会いした時には 36 歳になった本職にもいつも温かいお言葉をかけてくださいます。本職が修士二年の時(もう十二年も前なのか……)、本学セミナーハウスで開催されたスペイン語学の研究会で、

「バーっとデータベースから集めたデータをガーっと分析したらこんな結果になりました!」

みたいな雑というかほとんど反知性主義な発表をして大炎上したことがあります。ちょっとあまりにキツく、本当にこの業界から足を洗おうと思ったりもしたのですが、福嶌先生から「きらりと光る部分もないではなかった」というようなことをおっしゃっていただき思いとどまったりしたこともありましたっけ。

Complete Spanish Step by Step

Barbara Bregstein という先生の御著作。こちらは英語で書かれた英語母語話者向けのスペイン語のテキスト。英語に抵抗感ないならこのテキストはとてもいいと思います。説明文がかなり多く、独学にもいいです。全1058 ページ、練習問題も大量、なのに Kindle 版なら 2571 円という。コスパの鬼みたいな本ですな。

地の文の英語もかなり平易で、よほど英語が苦手というのでなければ、ちょっと慣れればするする読めるようになると思います。本学赴任前は関東のあちこちの大学で教えておりましたが、いくつかの大学ではこちらのテキストを使っていました。テキスト内の英語で苦戦した学生はほぼいなかったと記憶しております。

スペイン語と英語の間には多くの類似点があり、英語のことを思い出すと、理解がスムーズに進むことが多々あります。最近やったのだと比較とか時制の一致とかね。この教科書はスペイン語と英語はこんなところが似てますよ、こんなところが違うので注意しましょうね、みたいな書き方をしてくれているのがいいですね。この教科書で勉強していたら英語もできるようになってお得かなとも思います。

他にも良書はたくさんあるのですが、このくらいで。

By qsupe

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